細胞膜の重要性

 一人の人間の身長を仮に1.5(m)とすると、細胞の大きさを仮に0.01(mm)とすると、この細胞が縦に150000個=15万個並んで身長と同じ長さになります。とてつもない数です。

 それはそれとして、多細胞動物のほぼすべては食物を摂取する口と老廃物を排出する部分があります。

 人間の場合、口は基本的に食べたものを咀嚼し、小さなものに噛み砕く機能があります。また唾液の成分が一部の物質と化学変化を起こし、消化しやすいような形に変えています。

 咀嚼された食べ物は胃に入ると、胃液や各種の酵素によってさらに分解が進み、どろどろの粥上になっていると思われます。

 ある程度分解が進んだところで、食べ物は小腸に送られ、ここでさらに別の酵素が働き、主として栄養分が吸収されます。

 様々な健康関連書籍で「腸の調子を整えれば健康が維持できる」と書かれているのは、要するにここできちんと体に役に立つ栄養分を摂取できるかどうかということが、健康の条件となっているからです。

 また本来体にとって不要なものが取り込まれたときも、ここで一種のフィルターのような働きがあり、そのまま排出されたり、肝臓に運ばれて解毒されたりするのだと思います。

 栄養分が吸収された食べ物は、腸の内壁で役目を終えた腸内細菌や腸の内壁を構成していた思われる不要になった細胞と一緒になって大腸に運ばれ、ここで一般的には水分が吸収され便が作られます。

 つまりおなかの調子が悪くて、下痢気味だというのは、基本的に大腸の働きが弱っている、もしくは大腸に腐敗細菌等の大量の異物が存在する状態だといえそうです。

 最終的には、食物のかすや不要な腸内細菌、腸の内壁、体の各部から運ばれた不要物質等が、尿や便となって排出されるわけですが、それをもっと簡略化して考えると、要は樽状の生物がいて、その真ん中にパイプがあって、その上が口、下が排出部分という風に考えられます。

 問題はこのパイプもまた細胞で出来ているということで、これは細胞というレンガまたはレゴブロックのようなものを積み重ねて、煙突のような形にしたものだと想像できます。

 このパイプの中を液体や食べ物が通過するとき、通常のパイプならそのまま通過させれば良いだけですが、生物の場合は、通過する物質の中から栄養分や水分を抽出するという機能が必要になります。

 また通過している物質が細胞に取り込めるような物質になっていない場合は、消化液や酵素を分泌して腸内で化学変化を行い、それを吸収します。

 こういった作用を腸内の一つ一つの細胞が担っているわけで、ある時は消化液や酵素の分泌、ある時は栄養分の吸収、すなわち消化という二つの機能を使い分けていることになります。

 だとすると「いったいどうやって必要なものを選んで」「どうやって選んだものを細胞内に取り込んでいるのか」「どうやって酵素や消化液を分泌しているのか」ということが気になります。

 腸内を流れる栄養分と細胞内とは、細胞膜を接してこれらのやりとりがおこなわれているわけですから、いかに細胞膜のはたらきが重要か、と言うことが良く分かります。

 さらに取り込まれた栄養分や水分は、最終的に血液の流れに乗り、肝臓で必要な物質に再合成されたり、蓄えられたり、もしくは血管から血流に乗って体の各組織に運搬され、必要な細胞にそれを受け渡すということが行われていることになります。

 というわけで、栄養分の摂取を行うために、細胞膜の重要性が見えてくるわけで、当然それではこの膜はいったいどんな構造になっているかを知りたくなります。

 そこで先ず細胞膜の構造の前に、その厚さを調べてみると、だいたい10の-8乗mだそうで、0.00001(mm)となっているようです。

 ということは細胞の大きさを0.01(mm)とすれば、約1000倍ですから、1辺1(m)という巨大な細胞があると、その膜の厚さは1(mm)ということになりそうです。

 それでも水分子の大きさの100倍の厚さであるとも言えそうで、細胞レベルから見ればものすごく薄い膜ですが、分子レベルから見ればとてつもなく厚い膜だと言えそうです。

 直径1(m)の風船があって、その風船の膜の厚さは1(mm)。その表面に水分子が近づくと、その大きさは0.01(mm)という感じでしょうか。肉眼で見えるか見えないかの限界よりちょっと小さいぐらいです。



細胞の大きさと分子


健康を考える基礎知識


表紙に戻る