拡散、半透膜、選択的透過性

 すべての物質は100数種類の原子で出来ていて、それがいくつか集まって分子となります。100数種類のレゴブロックを使って、自由に分子を組み合わせるようなものです。

 当然ながら原子も分子もそれぞれが熱運動を行っています。分子の場合は原子同士が結合した状態で、いろいろと動き回っていると言うことです。

 もしその物質をひたすら冷やし続けることが出来れば、原子や分子の運動はどんどん静止状態に近くなります。

 この極限の状態が、世の中でもっとも温度が低い状態、すなわち絶対零度と言われている温度で、これは摂氏温度で−273.15℃ぐらいになります。

 しかし私のような知識が充分でない人間からすると、そもそもこんな温度をどうやって測定するのだろう?と考えてしまいます。つまり温度を測ろうにも、温度計自体が凍り付いて動かないはずだからです。

 またそういった温度計があったとしても、今度は温度計の温度が対象物に熱エネルギーを与えてしまいそうです。

 その意味では、この数値は理論値なんだろうなと思っていますがよく分かりません。

 それはそれとして、生物、特に人間の場合は体の中の大部分が水という物質で出来ているわけですから、基本的には0〜100℃、体温で考えれば35〜42℃ぐらいの範囲での化学反応を考えればよいと言うことになります。

 そこで次に考えることは、水という液体の中に何か別の物質が溶けていくとき、どのような現象が起きるかということです。

 たとえばコップの中に水を入れて、この中にインクを1滴静かに落とします。するとインクの色を構成している粒子は熱運動を行っていますし、水分子も熱運動を行っていますので、そこで化学反応が起きなければ、インクの粒子は自然に水分子の間を熱運動によって通り抜けて全体に広がっていくことになります。

 面倒な説明ですが、要するにコップの一部にインクを1滴落としてあげると、そのインクは何もしなくても、時間をかければ自然にコップ内に拡がっていくということです。これを化学では「拡散」と呼んでいます。

 当然この「拡散」は水やインクの温度が高ければ、その粒子の熱運動も大きくなるので、より早く「拡散」という現象が起きます。

 要するに物質と言うのは、水に入ると、何もしなくても自然に全体に溶けていくという事です。

 ただし脂質に関しては、いわゆる水と油の関係と言うことで、そのままでは、いつまで待っても溶けていきません。

 そういった予備知識を基にして、細胞の中と外で物質がどう動くのかと言うことを考えます。

 このときの基礎知識ですが、細胞膜の構造や性質が問題になります。つまりリン脂質のことですが、前ページで書いたように、このリン脂質の隙間はかなり小さいようで、ひじょうに小さな分子しか通過できません。

 だからこそ、細胞の外と中をきちんと区別して、細胞としての形を整えることができると言うわけで、何でもかんでも自由に通したら、膜としての意味を成さないことになります。

 ただしこのあたりの表現が非常に微妙なのですが、何回も書いているように、リン脂質の隙間以外にたんぱく質のパイプを通して必要な物質は吸収し、不要な物質は排出しています。

 一般に生物や化学では、小さな分子は通すけど大きな分子は通さない膜のことを、「半透膜」と呼んでいます。

 従って細胞膜は半透膜の性質を持つと言えるわけですが、一方でたんぱく質のパイプによって必要な物質を選んで吸収したりすることが出来る性質も持っています。

 これを「選択的透過性」と呼んでいますが、要するに単純に小さな分子だけを通過させる半透膜の性質と、必要な物質を選んで通過させる選択的透過性の二つを併せ持っていると言うことになります。

 というわけで、次のページでは、先ず前者の小さな分子は細胞内外のどちらに移動するかと言うことを考えたいと思います。
 



受動輸送、能動輸送


健康を考える基礎知識


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