細胞内外を移動する物質

 前ページで書いた受動輸送、能動輸送の他に、もう一つ細胞が物質を取り込む方法がありました。

 それが飲食作用と呼ばれているもので、細胞膜表面に存在するたんぱく質のパイプでは通らないような比較的大きな物質をなんとか細胞内に取り込もうというものです。

 これは細胞膜自体が変形します。たとえば一部に穴が開いたように変形し、そこに目的のものを集め、上にふたをして内部に取り込む方法。

 もう一つが細胞膜自体が、目的とする物質の方に近づき、全体を抱きかかえるようにして細胞内へ運搬する方法等があります。

 一方細胞内で不要になった、比較的大きな分子は、その物質に向かって細胞表面が陥没し、穴が開き、その穴から外に放出されると言う方法になるようです。

 というわけで、細胞が細胞膜を通してどのように物質を細胞内に取り込んだり、排出したらりしているのかというメカニズムが分かりました。

 次に知りたいのは、ではどんな物質が具体的に細胞内外を出入りしているかと言うことです。

 いろいろネットの情報を調べてみて分かったことは、以下の通りです。

・ 窒素、酸素、二酸化炭素、水、尿素、グリセリン(グリセロール)といった小さな分子
(ここで言う小さな分子とは、結合している原子の数が少ない分子ということだと思います。ただグリセリンはその範疇に入らないような気もします)

・ ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、塩素イオン、マグネシウムイオンといった、水の中に溶けるとイオンになりやすい物質

・ アミノ酸、グルコース、多糖類、たんぱく質、核酸

 ということで、1個の小さな細胞が、自分に必要な物質を選別し、目的のものを発見すると様々な方法で、それらを細胞内に取り込み、逆に不必要なものを排出していることになります。

 早い話が単細胞生物というのは、こういった物質を直接細胞膜を通してやり取りしているわけで、それがものすごい数結合したものが多細胞生物だというわけです。

 ちなみにアミノ酸と言う言葉は栄養学の点からもよく聞きますが、特定の似通った構造を持つ有機化合物の総称で、全部で20種類あります。

 この20種類のアミノ酸が様々に多数結合したものがたんぱく質と呼ばれるもので、我々の体の構成要素になっています。

 ということは、これらのアミノ酸すべてを人間の体は必要とするわけですが、残念ながら人間の体内で合成出来ないアミノ酸が8個あり、これらは外部の食べ物から補充するしかありません。

 これらを「必須アミノ酸」という言葉で呼んでいますが、名称は「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」「トレオニン」「メチオニン」「フェニルアラニン」「トリプトファン」「リシン」の8つですが、最近は「ヒスチジン」という物質を加えることもあるようです。

 なお余談ですが、アミノ酸と聞くと、栄養ドリンク剤を思い浮かべる方もいると思います。一部のコマーシャルでよく聞くのは「タウリン」という物質。

 この物質は上記アミノ酸の中には含まれていません。なぜならアミノ酸に共通する構造がまったくないからです。

 にもかかわらずアミノ酸の一種であるかのように宣伝しているコマーシャルがあるような気がします。これは「アミノ酸は大事」という消費者の意識に訴えかける戦略ではないかなと思います。

 ちなみにタウリンというのは体内で合成できる物質ですから、あえて外部から取り込む必要もないはずです。

 というわけで、問題は必須アミノ酸です。これらは自分で合成できないのに必要だと言うわけですから、何らかの形で摂取しないといけません。

 ではどんなものに含まれているかというと、我々が食べているもののすべてです。ただし食べ物によって含まれるアミノ酸に偏りがありますから、それを解決するためにいろいろな食材をバランスよく食べる必要があるという結論になります。

 また体内では取り込んだたんぱく質を分解し、必要なアミノ酸を作り出し、それを再合成して体物質を作っているわけですから、食生活に極端な偏りがない限り、必要なアミノ酸は自動的に作られるはずです。

 ということはアミノ酸を謳い文句にするような健康食品の必要性は、普通の食生活を送っている限りほとんど必要ないという結論になります。



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