教育現場では、識字障害について
ほとんど知られていません

識字障害、日本では5%(2012.10.13)

 スティーブン・スピルバーグという、大変有名な映画監督さんが「識字障害」という病気?を持っているということを聞いてびっくり。 

 識字障害というのは、文字の区別が出来なかったり、文字や数字だけがぼやけて見えたりする障害のようですが、原因は脳の中枢神経系にあるというようなことが、今日の毎日新聞の社説に出ていました。

 内容を読んでみると、英語圏の発生率は10%以上、日本での発生率も5%以上という数字を見て、正直愕然としました。もっとず〜っと少ないと思っていました。

 というのも、私の仕事は教員ですから、これまで30数年間それこそ何千人という生徒に接してきましたが、この識字障害というものを意識して授業をしてきたことは一切無かったからです。

 もし5%という数字が正しかったら、小中学校は義務教育ですから、一クラス30人の中に1.5人、すなわち一人か二人は識字障害の可能性があるわけです。

 またそういった子は、どうしても学習に支障をきたすことが多いでしょうから、高校に進学するときも、どうしても勉強が苦手な子どもが多い、ある意味指導困難校と呼ばれる学校へ進学することが多くなるように思います。

 とすると、私の職場は高校で、これまでも指導が大変だといわれている学校で教えてきましたので、実感としてよく分かるのですが、そういった識字障害の子が存在する可能性は、いわゆる進学校に較べて遥かに多くなります。

 ということは、私がかつて教えた子の中に、平均的に見て5%、指導困難校では10%、20%の子が本人はまったく意識しないままに、実はその識字障害で学習がうまくいかない例もあったと思われます。

 たしかに思い返してみれば、「この生徒は、性格はこんなに良いのにどうしてこれほど勉強できないんだろう」とか「こんなに授業に集中しているように見えるのに何で記憶に定着しないんだろう」とか「この子はどうしてこんなに板書が下手なんだろう」と感じることがずいぶんありました。

 もちろんこれらの原因のすべてが識字障害にあるとは思えませんが、やはり5%という数字は大きいです。私が「本当に勉強が苦手なんだな」と感じた生徒のかなりの部分に、こういった学習障害を持っていた可能性があったんだなと改めて感じました。

 しかしADHDといった多動障害は近年指摘されるようになったものの、この識字障害について意識している教員はほとんどいないようにも思えます。

 見分け方は良く分かりませんが、黒板の文字を文章や単語としてではなく一文字一文字丁寧に書き写しているとか、黒板と同じ形に文字を書き写せないとか、板書の様子を注意深く見れば分かる部分もありそうです。

 今現在文科省や各県の教育委員会がこういったことに関して、教員向けにどのような研修を行っているのか私はよく分かりませんが、少なくともこういった障害が存在していると言うことを全教員に早急に周知徹底すべきだと思います。

 教員も人間ですから、何回教えても漢字を書けない生徒がいたら、つい感情的になって「こんな漢字も書けないのか」と罵倒してしまうこともあると思います。言われた方は、何故自分だけが書けないのか分からないはずですから、「自分は駄目な人間だ」と思いこむ可能性も大きいです。

 しかしスピルバーグ監督のような方もいると分かれば、ずいぶん勇気づけられるのではないでしょうか。



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