人間だけが欲求を抑え込んでいます

新皮質、古皮質のはたらきとストレス(2012.10.20)

 私の仕事は物理を専門とする高校教員なのですが、様々な理由によって今は非常勤講師をしていて、さらに今年はなんと生物を教えています。

 あらためて生物の教科書を見直しながら、私が高校時代だった40年以上も前の教科書を思い出そうとするのですが、当たり前ですがほとんど思い出せません。

 それでも、この40数年間で生物分野はものすごい勢いで発展し、遂にiPS細胞なるものが作られた、というような嬉しいニュースまで最近は報じられました。

 それはそれで置いておいて、実は今、脳の働きという授業を行っています。人間が人間であるという特徴は、この脳の働きが他の動物とはかなり異なる、という点を力説しています。

 特に思考、言語、感情といった部分に特徴がある、というようなことを言っていますが、その過程で、大脳には新皮質と古皮質がある、という話もしました。

 簡単に言えば古皮質は、人間が動物として持っている本能や欲求みたいなもので、新皮質は思考、感情、創造といった分野を扱っています。

 動物や人間の進化の歴史を比較すると、基本的に古皮質については動物も人間もそれほど変わらないようですが、新皮質は動物ではあまり発達せずく、人間だけが発達した、という経緯があるようです。

 で問題は、動物の場合は古皮質の支配領域が大きいわけですから、基本的に本能的な欲求に従って生活を送ることになるのですが、人間の場合は自律神経と同じように、どうやら古皮質と新皮質の間で微妙なバランスを取りながら、常にやりとりが行われているということです。

 つまり簡単に言えば「食べたい」という欲求が古皮質側で起きても、「今は食べる時間じゃない」というように、新皮質側がそれを制御するわけです。「眠りたい」と思っても「あと少しだけ起きてこの仕事を片付けよう」なんて思うわけです。

 これは普段から何気なくやっていることで、常に頭の中に欲求が生まれるものの、それを身の回りの情勢に応じて新皮質が、実際にやっていいかどうかを判断しているわけです。

 余談ですが、この判断を鈍らせるのがアルコールですね。従って痛飲して酒に飲まれてしまうと、新皮質が働かなくなり、古皮質の欲求がそのままストレートにでて、様々な問題を起こすわけです。

 というわけで、新皮質と古皮質が常に牽制?しあっているのが人間の特徴ですが、時に本能や欲求が強く生じているにも拘わらず、様々な理由で長期間その欲求が新皮質によって、制御、抑制される状態が続くことがあります。

 どうやらこれがストレスの原因だということが、生徒に教えている内に私も納得できました。つまり自己の欲求に対して、それを過剰に抑制する状態が長く続くということで、そうなると体の様々部分に悪影響が出ると言うことです。

 ということはストレスを解消すると言うことは、ある意味本能の欲求に従うということであり、要するにたまには感情の赴くままにやりたいことをやればよいと言う結論になります。

 ただ実際には様々な社会的規範があり、また自分自身のプライドや社会的地位もあったりして、なかなか思い通りには出来ないとは思います。そこで普通は運動や音楽、入浴、食事といったものに代償を求めているわけです。  



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