肺炎は怖いです

中村勘三郎さんのご冥福をお祈りいたします(2012.12.5)

 自分の年齢が上がると共に、私より年下の方がなくなる割合は増えるというのは当たり前のことですが、今日の朝入ってきた「中村勘三郎」さんの訃報にはびっくり。57歳という年齢を聞いてさらにびっくり。テレビで見るのはいつも元気な姿だったので、まさか闘病生活をされているとは知りませんでした。

 ニュースに寄れば6月に食道がんの摘出手術を受け、その後11月に肺炎を発症。その後呼吸不全という経過のようですが、最終病名は「急性呼吸窮迫症候群」という聞いたことのない病名でした。

 この病名について調べてみると、ウィキペディアに「敗血症、大量輸血、重症肺炎、胸部外傷、肺塞栓、人工呼吸、純酸素吸入、急性膵炎等で重症の患者に突然起こる」(引用終わり)とされているようで、どれに該当するかは分かりませんが、あえて言えば重症肺炎と言うことでしょうか。

 症状は「頻呼吸と1回換気量の低下、肺水腫が起きる」(引用終わり)と書かれていますから、突然血液中の酸素の量が足りなくなり、呼吸回数が増したのだと思いますが、もともと肺炎が起きていると、肺での酸素の取り込み力が弱くなっていると思うので、いくら呼吸しても酸素が吸えないと言うことになりそうです。

 気になるのは、6月の食道がんですが、これは初期と書かれています。ところが手術は12時間の大手術であったとも書かれていて、初期と12時間というのが矛盾するようにも感じられます。

 しかし術後は順調に回復していたとのことで、その意味ではその後に発症した肺炎が遠因になったかなと言う気がします。

 さらに言うと、その肺炎は、手術終了後、もし抗ガン剤を投与していたとすると、白血球数が減少し、感染症にかかりやすくなっていたとも考えられます。

 実は私の妻が悪性リンパ腫で命を失ったときも、最期は肺炎症状がきっかけでした。妻の場合は、予定されたクールをなんとか最期までこなして完全に治してやろうと思ったのが裏目に出たようで、骨髄そのものが化学療法で疲弊し、正常な白血球を生産できなくなりました。

 どうなったかというと、まだ成熟する前の白血球が続々と血中に放出されると言うことで、病名は「急逝骨髄性白血病」というものです。

 この場合、正常な白血球が血液中にいないため、感染症にかかりやすくなります。またいったん罹ると、自分の白血球が働かないため症状が重症化します。

 妻の場合は、無菌室で治療を受けていたので外部からの感染症は防ぐことが出来ましたが、なんと自分自身が日頃から持っている細菌が肺に入り込み、そこで増殖。

 これが肺炎症状を引き起こし、酸素を呼吸することが難しくなり呼吸不全となり他界しました。中村勘三郎さんの場合とは違うかもしれませんが、最期は似たような症状だなと感じます。

 抗ガン剤治療は、特に悪性リンパ腫の場合に効果を発揮するというのが一般的な見解ですが、あまりに強い薬を長期間投与し続けるのも問題だなと私は今でも思っています。

 中村勘三郎さんは57歳、妻は48歳でした。若くして亡くなるのは何とも痛ましいものです。ご冥福をお祈りしたいと思います。 



アジの解剖実習で考えたこと


悪性腫瘍、悪性リンパ腫


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