体を構成する細胞の大きさ

 私は高校の物理を35年以上教えてきました。ただ最近の高校では科目が複雑化し、一人の人間が物理だけを教えるということは極めて稀です。

 その結果、物理教員が良く担当するのは化学なのですが、そこでは体の健康に関する内容としては「有機化学」について少しだけですが勉強しなおしました。

 またその次に教える機会が多かったのは地学と呼ばれる教科で、これは地球の環境問題や資源さらには太陽に関する知識も必要で、これまた人間の健康に関することだなと思っていました。

 さらに生物に関しては、本来は物理教員は苦手とする分野で、教えるためにかなり基礎知識を勉強しなくてはならないのですが、自分自身の体について学ぶという意味で、最低限の基礎知識は持っていたほう良いと思い、10数年教えたと思います。

 ただし物理以外の科目は、大学受験用と思われるような難易度の高い分野は教えていませんので、いわゆる一般教養に近い部分だろうなと思っています。

 しかしそういった知識があるせいか、病気に対する理解も多少あるのではないかと思うようになっています。また薬理作用のはっきりしない健康食品についても、ある程度正しく評価できるのではないかと思っています。

 というわけで、そういった視点で様々な健康に関する情報を見ているわけですが、特に健康食品に関しては、その薬理作用は置いといて「なんとなく体に良さそうだ」ということで購入している人が多いのではないかと思っています。

 そこで、今回自分自身の様々な体調についてまとめてきたこのサイトで、改めて生物学に関連した基本知識をまとめなおしてみようと思いつきました。

 でこのページが最初のページに該当するわけですが、何からまとめていこうと考えて思いついたのは、どんな生物の教科書にも最初に登場する「細胞」についてです。

 「生物は細胞からで来ている」ということは誰もが分かっていると思います。しかし実際に自分の1個の細胞を目にする機会と言うのはほとんどありません。

 「ましてやその細胞の大きさはどのくらい?」という単純な問いかけであっても、即座に答えられる人は少ないと思います。

 そこで先ずは大きさについてまとめようと思いつきました。ちなみに高校の生物では、「細胞の観察」という授業がありますが、だいたい実験材料として「タマネギ」の薄皮を使います。

 半透明のごく薄い皮をカッターやピンセットで丁寧にはがし、これを顕微鏡で観察するわけですが、この顕微鏡で大きさを測定することも出来ます。

 それによれば、タマネギの細胞の大きさは、縦長のものが多いのですが、長い方が300(μm)(マイクロメートルまたはミクロンと呼び、1mの100万分の1、もしくは1mmの1000分の1の長さを表す単位)、短いほうが80(μm)ぐらい、となっています。

 当然ながら肉眼では見えませんので顕微鏡で観察するわけですが、それでも大きさはあまり実感できません。

 ただ長い方が300(μm)だとすれば、これは0.3mmになりますので、タマネギの細胞を1個だけ取り出して、色をつけて白い紙の上にのせれば、そこに細胞が存在するということはかろうじて分かるぐらいの大きさだと思います。

 実際同じく生物の教科書に良く出てくる草履のような格好をした「ゾウリムシ」は、大きいもので200〜300(μm)ぐらいあり、これらを培養すると、水の中に小さな点が蠢いているのを見ることが出来ます。

 では人間の細胞の大きさはどのくらいなのか?もっとも大きいものは卵子だそうですが、その直径は140(μm)と書かれています。つまり直径0.14(mm)。肉眼で見えるか見えないかのぎりぎりの大きさではないでしょうか?

 これが分裂して、やがて60兆個と言われるような体の細胞に変化していくわけですから、本当に生命は不思議だなと思えます。

 特に最初は単に分裂するだけで、同じ細胞が2個出来るだけなのに、途中からある細胞は神経系になり、ある細胞は消化系、ある細胞は筋肉というように、その種類が自然に分かれていく(分化といいます)わけですから、まさに不思議の極みです。

 ちなみに私が持っている生物の資料集には、人の精子は長さが60(μm)、すなわち0.06(mm)となっています。また肝細胞は20(μm)で0.02(mm)。白血球は6〜20(μm)で0.006〜0.02(mm)となっています。


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