唾液の成分とその働き(2)

 唾液のもっとも重要な働きは「アミラーゼ」による「デンプン」の分解で、高校の生物の参考資料にも、それしか書いてありません。

 私も授業で取り上げるときは「アミラーゼのはたらき」しか教えていませんが、ウィキペディアの唾液についてのページを見ると、他にも実に様々な物質が含まれているようです。

 その一部を書くと

1 無機質

 ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、塩素イオン、炭酸水素イオン(炭素、水素、酸素の化合物)、無機リン酸(リン、酸素、水素の化合物)、マグネシウムイオン、亜硝酸イオン(水素、窒素、酸素の化合物)、フッ素イオンとなっています。

 これらの物質が個々にどのような働きをしているのかは私には分かりませんが、そもそも体を構成している無機物質のほとんど(硫黄と鉄をのぞいて)すべてが含まれていることになります。

 一方これらの物質が唾液中に含まれているということは、逆に言えばこれらの物質を食物から取り込まないといけないということになりそうです。


2 緩衝作用を持つ物質

 緩衝というのは、ショックや傾きを和らげるという意味で使われる熟語ですが、化学や生物の分野では、溶液の酸性度や塩基性度(アルカリ性の強さ)が、いきなり激しく偏らないように調整している物質のことです。

 つまり飲み物や食べ物によって、口腔内の溶液や物質が、急激に酸性化したりアルカリ性化したりするのを防ぐ物質ということです。

 この役目を持っているのが、ウィキペディアでは重炭酸塩やリン酸塩と書かれています。普段の生活ではなじみのない物質がどんどん出てきますから、そのイメージをつかむのが大変です。

 重炭酸塩は、1で書いた炭酸水素イオンに無機質のイオンとして含まれているナトリウム、カリウム、カルシウムと言ったイオンが結合したものです。

 リン酸塩も似たようなもので、1個のリンと4個の酸素が結合してリン酸というイオンになり、それが重炭酸塩と同じような無機質のイオンと結合して出来たものです。

 こういった物質が結合したりイオンになったりすることによって、酸性やアルカリ性を調節していると考えればよいと思います。

 ちなみにリン酸塩という言葉はし、食品添加物に関心のある方は結構見聞きしているかもしれません。代表的な物質がリン酸ナトリウムですが、リン酸の後に無機物質のイオン名をくっつけると、それで化合物が出来上がりです。

 これらは、ハムやソーセージ等の加工食品で使われています。ということは、そもそも口の中(唾液中)に存在しているから安全、ということになりそうですが、実際には含まれる量が、食品添加物と唾液では前者の方が圧倒的に多いと思います。(データを見比べたわけではありません)

 というわけで、必要以上に摂取するのは考えものですから、できれば加工食品は控えめにした方がよいのではと私は思っています。


3 殺菌、抗菌作用をもつもの

 口というのは、人間で言う場合、もっとも日常的に外部と接点を持っている場所ですから、良い物質はもちろん、人間にとって不要な物質も分け隔てなく入ってくる可能性があります。

 特に空気中には本来の窒素、酸素の他にアルゴンを初めとする不活性元素と呼ばれる気体、各種の有機化合物(自動車の排ガス?)、ハウスダスト、火山灰、黄砂、PM2.5 、花粉、胞子、細菌、ウイルス、放射性物質等々様々なものが含まれていると思われます。

 これらをすべて栄養源として消化吸収できれば鉄壁の体になりそうですが、実際にはそうもいきませんので、悪さをすると思われる成分の一部は、口の中で食い止めたほうが合理的です。  

 という目的で含まれている物質が、殺菌、抗菌作用を持つものとして分類されているのだと思いますが、具体的には次のページへ



唾液の成分(3)


健康を考える基礎知識


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