免疫力は増やせば増やすほどいいのか
(2012.4.9)

 老化に寄って免疫力が落ちるのか、免疫力が落ちるから老化なのか、どちらが先?なのかよく分かりませんが、いずれにしても老化と免疫力の衰退は密接な関係があるような気がします。

 子供の頃は、元気な子供の場合、いわゆる生傷が絶えないという状態になりますが、子供の場合は血が出ても見ているそばから血が固まり、すぐにかさぶたが出来、数日もするとそのかさぶたがポロッと穫れて、その下に新しい皮膚が形成されています。

 まあこれは免疫力というよりも新しい細胞を作る力、細胞分裂がそれだけ活発だともいえるわけですが、当然細胞分裂が活発ならば、免疫細胞も次から次に作る能力があるはずで、それが免疫力につながりそうな気もします。

 つまり免疫力を高めると言うことは、基本的に体の中の細胞分裂を活発にするということにつながりそうです。しかしもともと体の中で作られている細胞は、その分裂回数に限界があるということも聞いています。

 つまりDNAの両端には、本来の遺伝には使われていないテロメアという部分があり、これが分裂をする度に少しずつ短くなり、なくなってしまうとそれ以上分裂が出来なくなり、細胞そのものが死滅するというものです。調べてみるとこれを細胞老化と呼ぶみたいです。

 この細胞老化が実際の体の老化とどの程度関係があるのかということについても現在研究中のようで、まだ詳しく解明されていないようです。

 ただこのテロメアは細胞増殖に一定の限度を設けることですから、不老長寿とは逆の働きをしているようですが、一方で無秩序な細胞増殖を繰り返すガンの抑制に寄与しているとも考えられます。

 しかし単純に考えて、テロメアによって細胞増殖の回数に限界があるのなら、免疫力を増やすと称して免疫細胞をどんどん増殖させると、それだけその後の生産力は落ちてしまうような気がします。

 つまり「生まれたときに獲得した免疫細胞数」×「生涯の細胞分裂回数」の大きさがあらかじめ個人個人である程度決まっているならば、免疫力を高めると称して細胞分裂回数をいたずらに一時期に増やしてしまうと、生涯の持ち分は減ってしまうということです。

 実は私の連れは「悪性リンパ腫」という病気で、抗ガン剤の治療を受けました。その際白血球に抗ガン剤が作用し、ほとんどすべての白血球がなくなっていまうという副作用が現れました。

 そうすると白血球を増やすために「ノイトロジン」という増殖を促す薬剤が使用されるのですが、治療初期にはこれを使うとすぐに白血球が増加しましたが、治療の後期ではいくら使ってもちっとも白血球が増えないという現象が起きました。

 つまり人の細胞生産能力は、一時的に増やすと後でしっぺ返しが来るということです。免疫力増加も、なんでもかんでも増やしておけばいい、という考えは間違いなのではないかという疑いを少し持っています。 



健康な体が免疫力を作る


免疫と健康


表紙に戻る