免疫細胞を増やしても・・・(2012.4.13)

 胸腺や骨髄で造血幹細胞か成長し、各種の血球が作られることが分かりました。そこでこの部分を刺激してあげれば免疫力が高まるのではないか、と考えて話を進めてきたのですが、調べている内に本当にそうなのか?と疑問を持つようになりました。

 つまり「ともかく免疫細胞を増やしさえすれば、病気にかからず健康な体を維持できる」ように思えますが、よく考えると病気にもなっていないのに免疫細胞ばっかり増やしてどうするんだ?という疑問を持つようになったということです。

 体内に異物が入ったり、細胞分裂そのものに異常が生じて変な細胞が出来てしまったとき、それを撃退または分解するのが免疫細胞ですが、普通の健康な人が健康な生活を送っている限り、免疫細胞は充分足りていると考えられます。

 そこへ「より健康になりたい」という願望から、必要以上に免疫細胞を増殖させるような刺激を行っても、増えた免疫細胞は活躍の場がない内に体内から消え去るだけで、単に免疫細胞を作る能力だけが疲弊するのではと思うようになりました。

 こんなことを考えるのは、やはり私の妻の「悪性リンパ腫」に対する抗ガン剤治療を見てきたからです。この治療は、抗ガン剤により異常なリンパ球と一緒に正常な白血球やリンパ球も極限まで減らし、その後正常なリンパ球だけを増殖させるという治療です。

 その際減らした後、正常な白血球を早期に増やさないと、抵抗力のない体は自分自身が体内に持っている普通なら何の影響も受けないような細菌が異常増殖してしまい、体に思っても見ない作用を及ぼす可能性があります。

 そこで白血球を無理に増やすためG−CSF(ノイトロジン)を投与していたのですが、最初の内はすぐに急快復した白血球数も、2年目の治療の最後の方になると、ちっとも増えないという現象が頻繁に起こるようになりました。

 つまり骨髄や胸腺で、ある期間に作ることが出来る白血球やリンパ球の数には、いくら薬を投与しても限界があるということです。

 これを一般の体に置き換えて考えると、健康な体作りと称して、免疫力が充分あるのにさらに免疫細胞を増やすという行為は、骨髄や胸腺に無駄な負担をかけていることであり、長い目で見ると高齢になってからの免疫細胞生産力が弱くなるのではないかという気がしてきたわけです。

 そう考えると、免疫というのは、異物が体内に入ったときにそれに対応できるだけの免疫細胞をなるべく早く生産する能力があるかどうかと言うのが大事なのであって、常日頃から必要以上に免疫細胞を生産するのは無駄だということになります。

 従って、問題は即応体制をいかに早くとれるかということになりますが、これはある意味訓練も必要です。つまり風邪にかかったらまずい、ということはよく分かりますが、風邪にかかることによって免疫を作ることが出来るわけで、風邪をひいた、よし抗生物質だ、という治療を続けていると免疫力が弱くなるのでは、と思うようになりました。



体の基本は細胞


免疫と健康


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