体の基本は細胞(2012.4.15)

 私は物理が専門で、高校では基本的に物理を教えることが多いのですが、最近は理科という教科の特性上、化学や地学、場合によっては生物も教える機会があります。

 そうなると高校で学習するような基本的な知識は持っていますが、教えるとなると教科書に記述されている背景にあるような知識も一応勉強しなくてはなりません。これについてはいくら勉強しても限度というものはなく、今でも翌日の1時間の授業に対して、1〜2時間調べて授業内容をまとめる、なんてことをやっています。

 特に生物に関しては、私が高校時代に習った内容から、現在は生化学的な内容まで含まれることがありますから、飛躍的な進歩を遂げています。

 私が高校時代に習った生物で最初の内容は今と同じ「細胞」でした。しかし当時、今から45年ぐらい前の教科書には、細胞は生命の基本単位であって、動物は細胞膜、植物は細胞膜に加えて細胞壁というのがあって、その内部には遺伝に関係する核がある、というのが基本的な記述でした。

 さらに詳細な構造として、ミトコンドリアやゴルジ体、小胞体、と言う細かい組織の名称はあったものの、その内部構造までは明らかにされず、核についても、その表面に仁と呼ばれる部分があり、その内部にヒモのような染色体が含まれていて、それが遺伝情報を持っていると言う記述だったと記憶しています。

 しかしその後電子顕微鏡や生化学の発達と共に、細胞の詳細な構造が明らかに、ゴルジ体やミトコンドリア、小胞体の構造と機能、さらに染色体の構造と遺伝子の配置まで解き明かされるようになり、生物の教科の内容は増える一方です。

 それと共に教える側も最新の知識を勉強しなければならず、なかなか大変な時代になったなと思えます。大学を卒業して5年ぐらいまでは大学で学んだ知識が直接役に立つと思いますが、その先は自分で勉強しないと追いつかない時代になってしまいました。

 なんか前置き?が長くなっていますが、何を言いたいのかというと、要するに我々の体を構成している基本単位は細胞だということです。

 この細胞が役割を分化させて、多数の細胞を作り、人体という体を作っています。細胞の分化とは、1個の受精卵が細胞分裂をしていく過程で、何らかのホルモンや酵素?の働きにより、ある細胞は骨に、ある細胞は筋肉に、そしてある細胞は血球にと変化していくわけです。

 実に巧妙なメカニズムであり、たった1個の受精卵が一人の人間を作るのに60兆個の細胞を作る必要があるわけで、倍々に増えながら分化し、あるものは死滅し、あるものは増殖を続けると言うことを生きている限り続けています。

 でこの細胞自身が、遺伝情報に何らかの異常をきたしたのがガンであり、体外から体内の細胞を破壊するような化学物質や細胞(細菌やウイルス)が入ってきたとき、病気や中毒症状を起こすわけです。

 しかしどちらの場合も、そういった影響を最小限にとどめようとするのが、いわゆる免疫細胞と呼ばれているものです。これらの細胞は、日々我々が意識していない状態で活躍しているはずですが、たまにその生産が追いつかないと、がん細胞や体外からのウイルス等の勢力が強くなることがあるわけで、その結果ガンを発症したりインフルエンザに罹って高熱を出したりするわけです。

 つまり常日頃から体内を環視し、異常を感知したらすぐに即応体制が取れる体が、免疫の強い体であるということです。



ミトコンドリア


免疫と健康


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