ぜんそくの始まり(その1)

 私自身はまったく記憶にありませんが、生後1年ぐらいしてから皮膚に湿疹が出たと母親が教えてくれました。当時の栄養事情や母親の健康状態はまったく分からないので、あくまで推測ですが、そのころすでに今でいうアトピー性皮膚炎になっていたのではないかと思います。

 ともかく痒がって勝手に体を掻くので、掻けないように手に包帯を巻いていたという話しも聞きました。私がこれはきっとアトピーだろうと思う根拠は、私の母型の父親である祖父が喘息持ちだったということを聞いていたからです。

 その後3歳ぐらいになると湿疹は治まりましたが、その代わりに喘息が現れました。これはなった人でないと分かりませんが、その息苦しさはなかなか文字では表せません。

 保育園や幼稚園に通うような年代の子供が、息苦しさに耐えかねて、夜もろくろく眠れずぜーぜー言いながら肩で息をしている状態は、それを見ている親の方も辛かったと思います。

 当時は今のようにすぐに効いてくるような気管支拡張剤もなく、ただひたすら発作を耐えるという状態が続きます。もちろんどうしても辛くて駄目なときは注射で発作を軽くした記憶もあります。

 しかし喘息がひどいときは、注射をしても症状が軽くなるのはせいぜい数時間です。それが過ぎれば再び発作が始まります。

 発作が始まると横になると苦しいので、座った状態で背中を丸め、若干前屈みで必死に呼吸をします。喉からはヒューヒューとかゼイゼイといった、いわゆる喘息特有の音が聞こえます。いつもその姿勢でいたせいか、私は小さな頃から猫背になってしまいました。

 原因は何だろうか。両親も悩んだと思います。夜となく昼となく発作が起きるので、毎日のように医者通いを繰り返し、終いには医者から薬剤と注射器まで借り受けて、自宅で父親が注射をしたこともあったようです。(大変な法律違反だったのかもしれません)

 喘息の治療というか薬の名前で、今でも印象に残っているものは、「ネオフィリン」という薬です。3〜4歳から5〜6歳ぐらいがもっとも発作が頻繁に起きた時期だと思いますが、この時期に使用されました。

 今でもあるのかな、と考えネットで検索したところちゃんとありました。効能には喘息や狭心症、気管支炎といったおなじみの症状が列挙されています。

 さらに副作用や相互作用について長々と説明があります。私の場合は5歳前後ですから、副作用云々というのはまったく意識していませんでしたが、この薬を飲むと動悸がしたことははっきり覚えています。

 使いすぎると心臓に良くないと言われたことも覚えています。この場合の使い過ぎとは、発作を軽減するために通常の使用量以上に使うことだと解釈していますが、当時の苦しさは半端ではなく、たぶん両親も見かねて若干使用量オーバーのきらいがあったではないかと思います。

 この頃、巷では体力のない子供を虚弱体質という言葉で呼んでいましたが、私の場合はまさにこれに該当しました。運動はほとんど出来ず、体は細く、骨も細くガリガリでした。この先、この子供の命は短いのではないかと両親も思っていたに違いありません。

 薬以外の今で言う民間療法もいろいろ試したみたいです。記憶にあるのは「お灸」です。どこにお灸をされたのか、今となってはあまり記憶がありませんが、肩胛骨あたりだったような気もします。しかし4〜5歳の子供にお灸なんて、本当に両親はわらにもすがる思いだったのだと思います。

 ひじょうに熱くて辛かったなあという思い出がありますが、残念ながら効果があったとは思えません。結局いつの間にかやめてしまいました。



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