液体を送り出すことの大変さ

心臓の構造は灯油ポンプと似ています(2015.11.20)

 心臓はポンプの役目を持っています。このポンプというイメージをどう伝えるか?私は仕事が高校の理科の教員で(専門は物理ですが)生物を教える機会もあり、なんかうまい例えは無いかといろいろ考えた結果「灯油ポンプ」に目をつけました。

 勉強の出来る子が集まっているような学校なら別にそんなことを考えなくても、心臓の構造やポンプとしての役割をまとめておしまいですが、その時は勉強が大嫌いな子が集まる学校で教えていたので、何とか生徒の関心を引くものが無いかと悩んで思いついたのが、灯油ポンプ。

 今は電池式でスイッチを入れれば、勝手に灯油タンクからファンヒーター等のタンクへどんどん灯油が移動しますが、以前は頭の部分についているプラスチックの赤い円筒を、手で握ることにより、灯油を移し替えると言うことが出来ました。

 結構大変な作業で、「ジュワジュワ」と握り締めることを繰り返すと、握るときに灯油が送り出され、手を離したときに灯油が吸い上げられるという、ごく簡単なものです。

 しかしこれこそまさに心臓の左心室の役割じゃないかと思え、早速実習助手の先生に無理を言って、古いタイプの灯油ポンプを10本ほど購入してもらいました。

 ちなみに灯油ポンプの頭の部分は直径が4cmぐらい。高さが7cmぐらいの円筒形ですから、その容積は90cm3弱(90cm3は90mLと同じです)。この中に灯油が満杯になるまで握り締めることはできませんので、だいたい心臓の左心室の70mLとほぼ同じと考えて良さそうです。

 というわけで、最初の授業で、前回書いた記事の内容を説明。すなわち1分間に70回血液を送り出すことが心臓の役目だというようなことを説明。

 そしていざ実験。片方に水を入れたバケツを用意し、もう片方に空のバケツを置き、ヨーイドンで1秒に1回程度ポンプを押して、ともかくどんどん水を移すという単純な実験を実際にやりました。

 結果は容易に想像できますが、ともかく大変。疲れるので、班員4人で交代しながら押すのですが、中にはポンプを使ったことが無い生徒も多数いて、勉強嫌いな子達ですがそれなりに盛り上がり、なおかつ心臓の強さについて理解してくれたようです。

 とにかく心臓と言うのはものすごい作業をしているんだなという実感を得るための実験ですが、実際の心臓は実は送り出すだけでなく、回収する作業も行なっているわけですから、進化の賜物とはいえすごいもんだなと思います。



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